微分方程式論の一端を覗く-自由落下運動と2次元点渦系を例に-(高橋 亮 著) -奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 出版会-
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ここで、 は質点の初期位置をあらわします。また、質点の初期位置が決まれば、(2) の解が一意的であることも示すことができます。このとき、(2)は適切性をもつ(解が一意的に存在する)といいます。本来、初期値に対する連続性を適切性の条件に加えるべきですが、説明がややこしくなるので、ここでは省略します。 (2) のような簡単な微分方程式を除いて、一般に微分方程式は求積法で解を求める(式変形で解を求める)ことはできません。そのため、適切性は決して自明ではありません。実際、解が存在しないような場合もありますし、解が複数個ないしは無限個存在するような場合もあります。このような数学的事象は、数理モデルが自然現象を記述するのに妥当であるか否かという根本的な問題を生み出しました。また、微分方程式の解の挙動は、各々の微分方程式で分別されるほど多種多様で、それを解説する文献は数えきれないほど存在します。このように、微分方程式はバラエティに富んだ研究対象であることがわかります。 3.2次元点渦系 ノルウェーの物理学者ラルス?オンサーガー(1968年ノーベル化学賞受賞)は、台風や木星上で観測される大赤斑の渦構造を研究するために2次元点渦系の数理モデルを提唱しました。 ここで、いくつか言葉を導入します。最初に、流体という概念を導入します。ウィキペディアによれば、流体とは固体でない連続体のことであり、物質の形態としては液体と気体およびプラズマがそれにあたります。例えば、水、油、空気、稲妻、半導体はすべて流体です。本記事では、粘性が無視できるような流体(非粘性流体:空気やガスなど)を研究対象とします。次に、渦度という概念を導入します。渦度とは、3次元空間における流体の回転の様相をあらわすベクトル量で、流れの速度がなすベクトル場の回転として定義されます。2次元における非粘性流体の運動に関しては、渦度をスカラー量とみなすことができます。この場合、渦度の絶対値は渦の強さ、渦度の符号は渦の向きをあらわします。もし渦度分布がある点に集中しているとみなせるならば、その渦度分布を点渦(または渦糸)とよびます。数学的には、

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