微分方程式論の一端を覗く-自由落下運動と2次元点渦系を例に-(高橋 亮 著) -奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 出版会-
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回偏微分したものとの和をあらわします。関数にラプラシアンを作用させたときの値は関数の形状に関係しています。1次元の場合、ラプラシアンに対応するものは2階導関数であり、その正負が関数の凹凸を決定づける一つの指標となることが知られています(このことは高校数学の数学Ⅲで学習します)。同様のことが、2次元の場合に対しても成立します。このように、 (4) は偏微分の項を含むため偏微分方程式とよばれます。これと比して、(2) は常微分方程式とよばれます。この区別のために独立変数の個数に注意しましょう。 記号の説明をここで終えて、(4) の解について知られている数学的結果の一部を紹介しましょう。 、すなわち領域が単位円の内部の場合、 解は のときのみ存在します。さらに のとき、解は凝縮を起こします。すなわち、解は ”何らかの意味” で に収束します(ここで、 です)。”何らかの意味” の説明は省略しますが、 は特異解であり、原点 を含む領域では通常の関数として定義されません。このことを真に理解するには、超関数、弱収束といったアドバンスドな内容を学習する必要があります。一方、、すなわち領域が円環の場合、すべての に対して解が存在します。 これらの結果からわかることは、(4) の解の性質は領域の形状によって変わるということです。また、 という値や という関数が出現することも不思議です。ここでは単純な領域に対する結果(しかもごく一部)しか述べることができませんでしたが、より一般の領域に対しても様々な数学的結果が知られています。この節で述べた内容を真に理解するために、下記参考文献【2】を読むとよいでしょう。 4.おわりに 前節までに、自由落下の運動方程式と2次元点渦系の方程式を例に挙げ、微分方程式論のイントロダクションを試みました。もし微分方程式論に興味を持ったのならば、常微分方程式から勉強を始めることをおすすめします。

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