理科教育学を構築し、分かる授業を展開する(石井 俊行 著) -奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 出版会-
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- 9 - 4-4.考察 1)学習の転移を促す条件 ① 気づきの必要性 生徒は理科の「光の反射の問題」を6月に学習した。その6か月後(同年12月)に数学の「最も短い距離を求める問題」を学習した。意識調査で実施前から両問題は似ていると気づいていた生徒(A段階)は、109人中46人(42.2%)であった。 これらの生徒は、12月に数学の「最も短い距離を求める問題」を学習した時に理科と数学の問題が同様の内容だと気づいたと思われる。理科?数学両テストの正答数は、テスト実施の以前から気づいていた生徒(A段階)46人中32人(69.6%)、テスト中に気づいた生徒(B段階)44人中17人(38.6%)、気づけなかった生徒(C段階)19人中5人(26.3%)であった。これらA段階、B段階、C段階の3グループを比較しても、いろいろな教科を学習しながら、その内容の共通性に気づけるという能力は、問題解決にとって必要な能力であると思われる。学習が転移するには、まずいろいろな教科を学習しながら、その学習内容の共通性に対しての「気づき(notice)」が必要である。「以前から共通性に気づいていた」A段階の生徒と「最後まで気づけなかった」C段階の生徒間の数学学力に1%水準の有意差が見られたことから、数学の不得手な生徒は、学習内容の共通性に気づくことができない可能性が高いと考えられる。鹿毛らは、先行の課題と後続の課題の間に、共通の原理?構造があったとしても、学習者がそれに気づかなければ正の転移は生じないと述べている(鹿毛?奈須,1997)。 したがって、多くの生徒に「学習の転移」を起こさせるためには、各教科担任が他教科の学習内容の共通性とともに、解法の共通性に気づかせることが重要である。「学習の転移」を起こさせることは、問題解決能力を高めさせる手だての1つと考えられる。 ② 関連づけの必要性 数学の得意な生徒は、数学の問題を数学の解法で解くであろう。本研究の理科から数学への「学習の転移」には、数学の解法に自信のない生徒が、共通性のある理科の解法で解いてみようという「関連づけ

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