理科教育学を構築し、分かる授業を展開する(石井 俊行 著) -奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 出版会-
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- 11 - よって見出した「反射の法則」が、この作図には全く生かされない。実験結果と作図とが乖離したような構造となっている。 本研究における「反射に関する知識テスト」の結果からも、物体の虚像を対称軸としての鏡に対して対称に点を取って行う「光の反射」の作図で、どうして反射の法則が成り立つのかを中学1年生に説明を求めることは非常に難しいことが分かった。これらを説明するには、中学2年生で履修する、三角形の合同条件、対頂角が等しいことなどの数学的な知識が必要である。しかしながら、本研究のように、生徒自らが入射角と反射角とが等しいことを説明することができなくても、教師側から、「光の反射」の実験後に、対称軸の鏡に対して光源の虚像を書いて鏡との交点を見出して、光源→鏡(交点)→目、の順に矢印で結ぶ作図を行った後に、中学2年生での履修内容である、「三角形の合同」や「対頂角が等しい」ことに軽く触れ、「入射角=反射角」となることを説明しさえすれば、この乖離は解消するのではないだろうか。この振り返りを行わないと、実験で得られた内容と作図とは別物であるという印象を生徒に与えかねない。このことを払拭するためにも、時には未履修な数学の内容にも、理科の授業で触れる必要があると考える。理科の学習に必要な数学の学習内容が未履修なため、どうしても理科の授業で数学の知識を生徒に教えなくてはならない場面が多いことを、理科の学習事項と学習時期を縦軸に、数学の学習事項と学習時期を横軸にとったマトリックスを以前に示した(石井?箕輪?橋本,1996)。 一方で、「光は最短時間の経路を進む(フェルマーの原理)」のうち、反射の現象は、同じ媒質の行き来で、光の速度が変化しないので、「最短時間=最短距離」となるために、光の反射の問題の解法と数学の最短距離を求める問題の解法とが関連することについても中学生に触れておくことは重要である(石井?橋本,2012)。 理科と数学の教師は、教科間の連携を深めるとともに、理科と数学での共通点と相違点を共有し、生徒の誤概念を生じさせないよう、意識して授業を行う必要がある。 数学教科書の中には、単元の導入等の部分で、理科に関わる事象を取り上げたもの(岡本ら,2012)も見受けられるが、さらに、理科と数学が相互に補完し
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