理科教育学を構築し、分かる授業を展開する(石井 俊行 著) -奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 出版会-
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- 12 - て学習ができるように、理科教科書と数学教科書で、関連した内容を互いに例示していく必要がある。この手だては、子どもたちに「気づき」と「関連づけ」の2つの能力を身につけさせ、「学習の転移」を起こし易くするものと考える。 3)抽象化能力を高める手だて 今回の「理科テスト」、「数学テスト」は、それぞれの教科の文脈(教科独自の解決方法)で解答をしていけば必ず解に辿りつくことができる。 生徒たちが学校から社会に巣立ったとき、一筋縄で解決できない問題が山積している。しかも、その解決によって得られた解が正答なのかどうかもすぐには判定できない場合もあり、正答には辿りつけないことさえある。どうしても柔軟な発想力と応用力(知恵)が必要になる。知識を知恵に変え、柔軟な発想力で、問題を解決できる力を生徒に身につけさせていく教育が今後はなお一層必要となる。そのためにも、基礎的知識をしっかりと習得し、それらを総動員して逞しく問題を解決していける人間を育てていかなければならない。しかも、教科独自の手法のみならず、他教科等で習得した方略も取り入れて解決していくことのできる応用力も持ち合わせたい。「数学テスト」を数学の手法で解決できないからとすぐにあきらめてしまう生徒であってはならない。本実験で「理科テスト」を数学の解法で正答した11人の生徒と「数学テスト」を理科の解法で正答した18人の生徒は、柔軟な対応力のある生徒だとも言えよう。 本研究では、数学的統合のみならず、理科と数学とを統合していく力を子ども達に身につけさせていけば、多様な問題に対応する能力が高まり(学習の転移も起こり)、共通性を見出す能力も高まっていくものと考える。そのためには、知識とともにいろいろなことを俯瞰して見ることができる力も同時に育成していかなければならない。福島の原発事故で汚染水が漏れ出ていることが問題となった際、原発の専門家が集まっても解決策が見つからなかった。最終的に、水ガラスを使った漏れを防ぐ技術を用いたが、この方法は建築業界では一般的なことである。瀧本はこの例を取り上げ、日本の教育は、学問の縦穴を掘ることばかりに注力していて、複数の学問をつなぐ横穴の堀り方は教えていないと述べている(瀧本,2011)。正に「生きる力」に直結した考え方であるとも言えよう。

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