理科教育学を構築し、分かる授業を展開する(石井 俊行 著) -奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 出版会-
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- 13 - 抽象化とは、表面が違って見えるものの、中身の共通性を見いだすことで、教育の成功のカギは、どれだけ学習者の抽象化能力を高められるかにある(富田,2012)。抽象化能力を高める1つの方法として、一見違った問題と捉えがちな本実験の「理科テスト」と「数学テスト」の共通性に着目したい。この両テストを対比させた授業を生徒に行うことにより、生徒の抽象化能力が高められると考える。したがって、両テストを対比させた授業は、生徒の問題解決に対処していく能力を高めさせる手だての1つとして有効なのではないだろうか。 4-5.まとめ 現代社会における多くの企業が求めているのは、問題解決能力の高い人材である(岸本?渡辺,2010)。問題点を把握し、それと対峙して逞しく問題を解決していくことのできる有能な人材の育成こそが教育の喫緊の課題である。 理科の「物体からの光が鏡で反射して目に届くまでの経路を求める」問題と数学の「最短距離を作図して求める」問題は、解決方法に共通性がある。本研究では、この点に着目し、教科間の「学習の転移」ついての検証を行った。 その結果、「学習の転移」を促す条件として、「気づき(notice)」と「関連づけ(interdisciplinaryattitude)」の両者が必要なことが明らかになった。本研究の意識調査でも、同じ解法で解決できる場合には、「授業でふれて欲しい」と回答した生徒が多数いたことからも気づかせる手だての必要性が実証された。 理科と数学の教師は、生徒に「気づき」を起こさせる指導として、教材の共通点と相違点を共有し、誤概念を生じさせぬよう意識して授業を行い、生徒の抽象化能力を高めていく必要がある。また、同教科の解法につまずいても、他教科で学んだ知識を活用して解いてみようとする「関連づけ」を促す指導が必要である。 本研究で明らかにしたように、両教科の問題を対比させて学習させることは、両教科の共通性を見出す能力を高め、生徒に問題解決のための「学習の転移」を起こさせる手だての1つとして期待される。 このような学習指導上の工夫が、生徒の学習内容の理解を深め、さらに学習を転移させる力を高めさせることにより、発見や発明を促す能力や創造性を広

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