でも、それを自由に使えるのが、仮名書道です。作品では特に「ひらがな」と「変体仮名」を混ぜて使います。昔の人がいろんな種類や書き方を発明してくれたおかげで、一つの音を文字にしたいとき、たくさんの中から自由に選ぶことができます。 2.平安時代の仮名作品『関戸本古今集』にみる文字の組み合わせ では、仮名のおもしろさの一つである、いろんな文字の組み合わせを紹介します。 平安時代にはたくさんの仮名が書かれ、現在にも素晴らしい作品が残っています。その中に、『関戸本古今集』という作品があります(このように現代にまで伝わる昔の名作を「古筆こひつ」といいます)。造形がおもしろく、私もよく参考にしています。 さっそく、『関戸本古今集』の「はな」という仮名を見てみましょう。筆者はどんな文字を選んだのでしょうか(図1、「花」以外の意味の部分を含みます)。 図1の下段には、それぞれ元になった漢字を交ぜて読みを書いています。「は」には3種類(「は」「盤」「者」)、「な」には2種類(「な」「那」)の文字が使われていることが分かります(なぜ「盤」や「者」が「は」なのかは、古い言葉の話なので今回は省略します)。それらを自由に組み合わせて、「はな」と書いています。しかし、同じ種類の文字を使っていても、太くなる部分やつなげる部分など、細かい部分が少しずつ違います。 では、同じ『関戸本古今集』から、他の「は」を探してみます。図2にある「は」は、左から「波」と「八」です。ひらがなの「は」は「波」からできているので、それに近い形をしています。一方、「な」の他の形には、図3のようなものがあります。実はこの3字は、すべて「奈」からできていて、ひらがなの「な」と元の漢字は同じです。書き方(省略のしかた)が違うだけということです。 図1「はな」 図2「は」 図3「な」 者那 者那 者那 者那 者な 盤な 盤な はな はな はな はな
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