では、これらを組み合わせて、「きたやまさとか」を仮名で表現してみます。図10の左が『関戸本古今集』から集めた文字で、右がそれを参考に私が書いたものです。粗密の変化を意識して、少し書き方に工夫をしました。筆画を近づけて書くところや、大げさに動くところを入れています。さらに違う表現を探してみましょう。図11のように別の仮名を、また『関戸本古今集』から集めました。これらの仮名は何と読むのか考えてみてください。これらを使って、別の書き方をしてみます。まずは画数を減らして全体的に簡素な表現にしてみてはどうでしょう(図12左)。反対に、複雑な仮名ばかり使うこともできます(図12中央)。「や」のような、大きな円みを帯びた動きを活かして、そのような動きができる仮名を多く選ぶこともできます(図12右)。図11の仮名がどこに使われているか分かりますか。図11の仮名は、左から「起(き)」「支(き)」「多(た)」「閑(か)」です。 仮名で表現しようとすると、このようにいろいろな書き方をすることができます。さらに、どの書き方を使うのかを、書き手が決めることができます。私はこれを書くにあたって、たくさんの文字を『関戸本古今集』で見ました。その中から、どの組み合わせにするのがよいかを考え、気に入った文字や書き方を選びました。私は、図12右の円みを入れた表現が気に入っています。 実は、この組み合わせを考えることが、書き手としてのおもしろさの一つです。それはまるでジグソーパズルのようです。しっくりくる組み合わせを見つけるのは簡単ではありませんが、ぴたっと合うと、嬉しくなります。ジグソーパズルと違うところは、唯一の正解の組み合わせはなく、自分の考えや気持ちに合わせて組み合わせを変えることができるところです。 図11 図10 図12
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