男の子はどの丸も同じあたりにあることから、実験者に見られているかどうかにかかわらず、2回のうち1回程度教えられた箱を開けていたことが分かります。女の子の方では●の方が〇よりも低い位置にあり、つまり実験者に見られていないときの方が、見られているときよりも教えられた箱を開けず、シールの入っている正しい箱を開けていたことがわかります。統計的分析を行っても、偶然より高い確率で女の子は5?8試行で実験者に見られているときの方が、6?7試行で見られていないときよりも教えられた箱を開けていたという結果になりました。まとめると、この実験では、男の子は実験者に見られていても見られていなくても選択が変わらなかったため、実験者にどう思われるかを気にしながら箱を選んでいないということが示されました。一方で女の子は実験者に見られていなければ、実験者に教えられた箱とは逆の、シールの入っている箱を選べるにも関わらず、実験者に見られていると、実験者に教えられたシールの入っていない箱を選んでいたことから、実験者にどう思われるかを気にして、あえて不正解の箱を選んでいたことが示されました。 このような結果を聞くと「男の子とは違って、女の子は生まれながらにして他の人の目を気にするといった社会性を身に着けているのか」と思うかもしれませんが、そうとは言い切れません。この男女差は、女の子の方がより礼儀を重視した教育を受けてきたという環境によるものかもしれませんし、この実験の実験者が女性だったため、実験者が同性である女の子の方が、男の子よりも「実験者と仲良くしたい」という気持ちが強かったのかもしれません。 この他にも、自分のお父さんやお母さんに見られていると、見られていることを気にして、実験者の言った箱を選ぶようになるかを調べる実験を行いました(残華?青山,2020b)。その実験では、男の子も女の子も同様に、お父さんやお母さんに見られているときの方が、見られていないときよりも教えられた箱を開けていました。どうやら男の子も女の子も自分の親に見られていると、その目を気にして選択を変えるようです。 3.おわりに もちろん、「どのように振る舞えば他人にどう思われるのか」を3歳児が大人と同じレベルで具体的にイメージして行動しているとまでは言えません。実際
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