有する「日本人の配偶者など」というビザから算出します。家族に日本国籍の人がいることから日本での滞在が認められているビザです。これに各国のムスリム人口比率で計算して、数値を算出するのです。また、日本各地にあるマスジド(「モスク」のこと)は登録制ではないため、所属するムスリムの人数を正確に出していないところが多いのですが、どれくらいの人数のムスリムが利用しているのか調査することでも大体の数値をつかめます。こうして数値が算出されるのですが、その数値を見たときに疑問を感じました。実態とはそぐわないからです。ではどう違うのか。それを知るためには、イスラームという宗教の教えについての知識を得ることと、人間の社会文化を研究する学問である文化人類学の調査方法を行うことでわかります。調査方法とは、ムスリムに直接尋ねるインタビューと、実際の生活や儀式などに参加させてもらって第三者の視点から観察する参与観察と呼ばれる研究方法です。 まず、イスラームの宗教教義から説明します。イスラームでは、ムスリム男性と結婚するキリスト教徒とユダヤ教徒の女性はイスラームに改宗しなくても良いという宗教規定があります。ですので、キリスト教徒である日本人女性は改宗する必要はありません。また、ムスリムの両親を持つ子どもたちは生まれながらのムスリムであるため、先に述べたイスラームの五行のうち、信仰告白の儀式を行う必要はありません。 このイスラームの教えから考えると、日本人女性がムスリム男性と結婚した場合必ずしもイスラームに改宗しないこともあるといえます。実際に、私が知り合ったアラブ系のムスリム男性によれば、彼の配偶者である日本人女性はもともとキリスト教徒として生きてきたこともあったためイスラームに改宗していないと述べていました。また、ムスリムの子どもたちの人数となると単純にはいきません。イスラームでは子沢山が良いといわれていることもあって、イスラーム地域に住む家族は大家族であることが当たり前となっています。ですが日本は違います。実際問題として、日本では得られる収入で生活ができないという理由から子どもが一人というムスリムの家庭がいます。また、子どものいない家庭もあります。それゆえ、一家族あたりの子どもの人数はおおよそこれくらいだろうと推測するしかないのです。統計調査によるムスリム人口の数は、残念ながら推定値であるといえます。
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