1500万年前、紀伊半島は巨大火山地帯だった(理科教育講座 和田 穣隆)

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1500万年前、紀伊半島は巨大火山地帯だった(理科教育講座 和田 穣隆)

今日は理科教育講座の和田先生の研究室へ来ました!こんにちは!

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こんにちは。

和田先生はどんな研究をされているんですか?

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私は火山を対象とした地質学(火山地質学と言います)に取り組んでいます。でも火山の研究と言えば、活火山に行ってそれを野外調査したりするものだと考えているかもしれません。
しかし、火山の研究はそれだけではありません。その昔、火山だった場所は長い年月の間に浸食が進み、火山の地下構造が見える場所があります。そんな場所の一つが紀伊半島です。紀伊半島は、今から1500万年前には巨大な火山地帯でした。

ええ!和歌山県や三重県も、昔は火山地帯だったんですね。

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現在の紀伊半島にある大峯や大台といった自然豊かな山々や、世界遺産で有名な熊野周辺には、かつてカルデラが複数ありました。カルデラというのは火山にある凹地形のうち、直径2 km(1kmとすることもある)を超えるものです。元々はスペイン語で「鍋」とか「釜」を意味する言葉です。火山で巨大な凹地を見てそんな形を連想したのでしょうね。

そんなに大きいへこみがあるんですね。でも、どうやって出来たんでしょう?

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カルデラは、火山が噴火する際に地下のマグマだまりの天井にあたる岩盤がマグマだまり内に落ち込んでできると考えられています。そのような噴火は大量の噴出物を出すので巨大噴火と呼ばれます。巨大噴火を直接観測した人類はいませんが、これまでの長い地球の歴史において何度も巨大噴火が繰り返されてきたことがわかっています。そして、今後も地球のどこかの火山で巨大噴火が必ず起こります。

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大きな噴火がこれから起こるかもしれないんですか???。

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さて、1500万年前の紀伊半島ではカルデラ形成に伴う巨大噴火により多くの岩石が形成されました。大峯山脈では花崗岩が山脈の中軸部分を構成しています。大台ヶ原山周辺には地下から上昇してきたマグマとその破片からなる火砕岩が弧状に分布します。三重県尾鷲市付近から和歌山県古座川町付近の間には、大規模火砕流として噴出した火砕岩や、そこにさらに地下から上昇してきたマグマによってできた流紋岩が大量に分布します。

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1.奈良県曽爾村「屏風岩」(国指定天然記念物)。室生火砕流堆積物(火砕岩)の柱状節理。

Photo3.jpg2.三重県名張市香落渓「天狗柱岩」での実習風景。1と同じく、室生火砕流堆積物(火砕岩)の柱状節理。

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3.和歌山県新宮市「神倉神社のゴトビキ岩」(世界遺産)。熊野酸性火成岩類の流紋岩からなる。

理科の授業で勉強したことのある岩の名前がいっぱいですね。奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站の近くでも噴火によってできた岩石は見つかるんですか?

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奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站近くの春日山から奈良県曽爾村や三重県名張市付近にかけては、カルデラから火砕流として噴出した火砕岩が大量に分布します。奈良県曽爾村や三重県,和歌山県に分布する岩石の多くは今、熊野那智大社(那智勝浦町)?神倉神社(新宮市)?花の窟神社(熊野市)といった世界遺産の御神体、多くの名勝や天然記念物となっています。研究室ではこれらの火成岩体について、どのように分布して、どんな構造で、どうやってできたのか?ということを野外調査や研究室で分析して調べています。

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4.和歌山県那智勝浦町、熊野那智大社「那智の大滝」(世界遺産)。滝をつくる岩盤は熊野酸性火成岩類の流紋岩からなる。

Photo5.jpg5.和歌山県串本町「橋杭岩」(国指定天然記念物)。地下から上昇してきたマグマが堆積岩の中で冷え固まった岩脈。流紋岩からなる。手前の海食台に転がる岩は津波石(津波の際に運ばれたもの)。

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ふむふむ。今残っている岩石から、火山のあったところやつくりについて知ることが出来るんですね!和田先生はどうして昔の火山の研究をされているんですか?

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昔の火山を研究するのは、火山の地下構造を知りたいというのが理由です。多くの人が「火山がいつ、どうして、どのように噴火するか知りたい」はずですが、そのためには火山がどんな構造をしているのか知る必要があります。火山の地下構造は意外にわかっていないのです。そこで私は紀伊半島のカルデラ火山の痕跡である地下構造を調べ、噴火の際にマグマや噴出物がどのように地下を移動していくのか研究を進めています。

なるほど!地下構造の研究を進めていくと、火山の噴火に関する謎も解けるかもしれないんですね。
噴火する火山の下でどんなことが起こっているのか、ぜひまた教えてください!今日はありがとうございました!

理科教育講座 教授 和田 穣隆

※この記事は、2022年2月の情報を元に作成されています。

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カテゴリ   :   研究コラム
最終更新 : 2022-04-06 15:44