子どものこころの健康増進へのアプローチ(教職開発講座 全有耳)

今回は、教職開発講座の全先生にお話を伺います!

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ようこそ!よろしくお願いします。

よろしくお願いします!今回はどんなお話を聞かせてもらえますか?

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私は子どもの発達やこころの健康(メンタルヘルス)に関する研究を行っています。現代は様々な不調や困り感をもつ子どもが増加していて、対策が求められています。今日は子どもの心の健康増進のためのアプローチ方法についてお話ししたいと思います。まずはなっきょんに質問です。こころの病気に限らず、「病気になる人を減らす」、すなわち「予防」と聞いてどのような方法をイメージしますか?

うーん、できるだけ早くに気づいて悪化しないように気をつけることですかね。例えば検診を毎年うけて、体重が増えたり血圧が高くなってきたら、運動したり食事に気をつけるようにしたり。

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そうですね、この考え方は一般的だと思います。この方法は「高リスクアプローチ」と呼ばれるもので、病気に罹りやすいリスクのある個人を対象に早期介入を行うものです。でも、これだけでは病気の予防効果は十分ではないとされます。もう一つ大切なのが「集団アプローチ」と呼ばれるもので、リスクを持った人を含む集団全体に対する介入を行うことです。図1を見てください。集団の中には、ある病気に罹りやすいリスクのある個人が一定数存在すると考えられますが、高い予防効果を得るためには、「高リスクアプローチ」と「集団アプローチ」の両者がバランス良く行われることが必要とされています。

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なるほど、誰もが生活習慣に気をつけて生活することが大切なのは、集団アプローチになるんですね。

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そのとおりです。実は、個人が有するリスクは小さくても母集団が大きい場合にその集団から発生する患者数は、個人が有するリスクは大きいけれども小さな集団から発生する患者数より多い」と言われています。効果的な対策を行うには両者がバランスよく行われることが重要なんです。図2はそのことを示しています。集団アプローチによってリスクの分布を全体に低下させること、高リスクアプローチによって、リスクの高い個人の数を減らす、この両者が必要なんです。

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それじゃあ、子どものこころの不調を減らすための具体的な対策はどんなものなんですか?

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図3に具体的な例を挙げました。不調に早期に気づいてあげて個別に支援を行う「高リスクアプローチ」が、現在学校で一般的に行われてるものです。一方でまだまだ不十分なのが「集団アプローチ」です。学校教育活動の中でこころの健康増進につながるプログラムが日常的行える体制づくりを進める必要があります。

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ふむふむ、学校で予防的な取り組みを行うことは、全ての子どもに働きかけられるということに意味があるんですね。

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そのとおりです。そのためには学校現場への専門家の関与が不可欠になります。教師の専門性と医療、保健、福祉職等の専門性が協働することで、学校をプラットホームとした集団アプローチが可能となります。私は小児科医師の立場で、ある地域でシステム開発の研究を行ってきました。その結果、「学校」という場でこころの健康増進のためにできることがたくさんあることが明らかになりました。これからも多様な視点で学校における子どものこころの健康増進へのアプローチ方法を探っていければと考えています。今日はありがとうございました。

心も体も健康で、生き生きした毎日を子どもたちには過ごしてほしいですね!素敵な研究の紹介をどうもありがとうございました!

教職開発講座 教授 全有耳

※この記事は、2021年10月の情報を元に作成されています。

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