小学校理科(理科教育講座 森本弘一)
今月の『奈教の授業』では、「小学校理科」を紹介します!
〈講義の基本情報〉
?対象学年:1回生(前期)
小学校免許取得必修科目
?受講者数:121名(乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站2年度)
小学校理科の内容はA区分(物質?エネルギー)、B区分(生命?地球)に分かれています。3年から6年までの各学年のそれぞれの区分の中で典型的な実験観察を提示し、解説するとともに、小学校理科と中学校理科、高等学校理科との関連について論じています。
- 学習指導要領の基本的な考え
- 昆虫の定義、植物体の構造
- 磁性体、電気回路、光の基本的な性質
- 太陽の見かけの動き
- 生物季節、光周性、サーカディアンリズム
- 太陽電池、直列並列回路、伝導、対流、熱膨張
- 物質の三態変化
- 月の動き、天気の様子
- 動物の発生、植物の発芽結実
- 水溶液、振り子、電磁石
- 流水の働き、天気の変化
- 人体の臓器、維管束、環境
- 電気エネルギーの利用、酸とアルカリ、てこ
- 火山と地震、月と太陽
- 全体の復習
授業では、説明および観察ののち、課題が提示されます。
3年生命では、「身の回りの生物と環境とのかかわり」「昆虫の成長と体のつくり」「植物の成長と体のつくり」を学習します。「昆虫の成長と体のつくり」では、小学校理科では、昆虫の生活環と昆虫の体を学習します。この内容は、中学校理科の「無脊椎動物」、高等学校理科生物の「生物の環境応答」と関連しています。
昆虫の成長の一つとして、私が飼育しているカイコの交尾の様子を紹介しました。
カイコは、個体や餌の入手、取扱いなどが容易であり、昆虫の体である頭、胸、腹の区別がつきやすく、生活環の長さが1か月と短い中で幼虫→さなぎ→成虫と完全変態するなど、教材としての適性のある生き物です。カイコは、中学校理科の「無脊椎動物の節足動物」に含まれ、高校理科生物の「生物の環境応答の動物の行動」では、カイコの交尾行動が例として取り上げられています。
観察では、カイコの羽化と交尾をタイムラプスカメラで記録しました。10秒間に1回の撮影です。
6月25日23時52分に1頭目が羽化しました。羽化した直後の様子です。まだ羽がのびていません。このカイコは、オスでした。(図1)
2頭目のカイコが羽化しました。6月26日0時59分です。メスでした。(図2)
3頭目のカイコが羽化しました。これもメスでした。6月26日3時47分のことです。この後、メス2頭は、お尻を上げて、フェロモンを出して、オスを誘っていましたが、オスは反応しませんでした。羽化直後のオスは、反応が鈍いようです。(図3)
図1 6/25 23:52 オスの羽化 | 図2 6/26 00:59 メスの羽化 |
図3 6/26 03:47 メスの羽化 | 図4 6/26 06:23 交尾 |
およそ3時間後、やっとオスが動きました。動き出すととても速くて、10秒間に1回の撮影間隔では、オスの動きの様子をほとんど捉えることができませんでした。このとき、2頭のメスはじっと待っていました。オスは、羽をふるわせてメスのフェロモンを感知しながら、メスをさがしているようでした。最初、右のメスに向かってから、左のメスに向かったように見えました。やっと無事交尾をすることができました。(図4)
「カイコの羽化と交尾の様子が印象に残っている。繭に入った状態からどのように成虫になるのか疑問に思っていた。繭から出たときに成虫になっていたので、驚いた。また、メスは成虫になってすぐに自由に飛び回ることもせず、フェロモンでオスを誘い3時間ほどで交尾の態勢になったのにも驚いた。私は子孫を絶やさないために進化した結果だろうと推察した。」
理科は実験観察がとても重要です。実験観察により科学的な見方や考え方(実証性、論理性、客観性)が身に付くからです。2回生の初等教科教育法(理科)で、実験観察の体験をします。さらに、3回生の教育実習をへて実験観察を実施できる教員になって欲しいです。
理科教育講座
教授 森本弘一
※この記事は、2021年4月現在の情報をもとに作成されています。
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