奈良県立教育研究所で行われたエネルギー教育推進事業研修会で常田琢教授が「はじめてのスターリングエンジン」と題して講師を務め、奈良県内の中学校理科教員7名が参加しました。
物理の中でも熱力学は、抽象的で理解が難しいと感じる教員や生徒が多い分野です。高校の物理授業でも、ガソリンエンジンやエアコンといった身近な熱機関との関連性を伝えるのが難しいとされています。スターリングエンジンは実際に作って動作させられる熱機関の代表で、構造的な単純さ、視覚的な分かりやすさから教材として注目されています。スターリングエンジンは「外燃機関」に分類され、内部で燃料を燃焼させる内燃機関と比べてクリーンなエネルギー源を利用できることから近年実用化が進んでおり、物理教材としてだけでなく環境教育やSTEM教育の観点からも有用です。
今回の研修会では、よく取り上げられる2種類のスターリングエンジンを参加者が自ら製作しました。一つ目は試験管とビー玉をピストン付きシリンダとして利用するタイプで、簡単に組み立てられ、火で加熱するだけで半永久的にシーソーのような運動を続けるもので、興味深く観察していただけました。もう一つは空き缶を用いた「ジャンピングエンジン」と呼ばれるタイプで、与えた熱によって激しく飛び跳ねる動きが特徴です。「運動エネルギーを生み出している」という実感を得やすい一方で、スムーズに動作させるためにはトライアンドエラーによる細かな調整が求められ、参加者も真剣に取り組んでいただけました。理科実験の楽しさを再確認するとともに、教育実践に新たな視点を提供できた研修会になりました。