平成27年4月2日、奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站講堂において、平成27年度入学式を挙行しました。
満開の桜の下、363名の新入生が、緊張した面持ちで奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站での新たな生活をスタートさせました。
長友恒人学長からは、「実践的体験は困難にぶち当たったとき、解決の糸口を切りひらく潜在的な力になる。」、「人間(ひと)としての存在の魅力」の基礎を学生時代に築いて欲しい」とエールが送られました。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
教職員一同、みなさんの本学での生活が充実したものになるよう、応援しております。
【新入生】
告辞を述べる長友学長 部員を獲得しようと勧誘に励む在学生
■ 学長告辞
入学式学長告示
本年度は、教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站271名、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院教育学研究科80名、特別支援教育特別専攻科12名、合計363名の入学生を迎えることができました。本学教職員を代表して、みなさんの入学を心から祝福し、歓迎いたしますとともに、みなさんの学びと研究に対する指導助言、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站生活に関する相談と援助について最大限の努力を惜しまないことをお約束いたします。
さて、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站入学のみなさんは、小学校から高等学校まで12年間の教育を受けてきました。人類が営々と築いてきた学問の成果を知識として吸収して自分流に組み立てることがこれまで12年間の「学び」でありました。乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站での「学び」は、これまでの「学び」に加えて、「自らの関心に焦点を当て、課題を発見し、その課題の解決に向けて自ら答を導く」という研究の要素が加わります。
ここで、私が現役の研究者として最後に関わったプロジェクト研究の例をお話しします。「環境変化とインダス文明」というプロジェクト研究ですが、国内外の50名以上の研究者がチームをつくって6年間継続しました。プロジェクトメンバーの専門性は多様で、言語学?文化人類学?考古学?インド学等の人文系に、地質学?自然地理学?地球物理学?気候変動学?生物学?農学?植物遺伝学?DNA考古学?年代学等々の自然科学研究者が加わった学際的なプロジェクトです。
「世界四大文明はいずれも大河流域に発達し、独自の古代文字と王権者を持つ文明である」と私たちは習い、教科書にもその様に記述されています。インダス文明は、「インダス河と現在は存在しない伝説の川(サラスワティー川)の氾濫原に発達した文明である」とされていますが、印章の文字はあるものの、エジプトのロゼッタストーンや石棒の刻まれたメソポタミアのハンムラビ法典のような文章になった文字列が見つかっていない、王権があったという確かな記録や遺跡も発見されていない、など他の古代文明と比べて不明な点が少なくありません。
私は、このプロジェクトの「古環境グループ」の一員として、「現在、雨期にだけ水が流れるガッカル?ハークラー川が伝説のサラスワティー川であるのか、ガッカル?ハークラー川が流れるタール砂漠ができたことによってインダス文明が滅びたのか」というテーマで、現地調査を含めて年代学の立場から参加しました。年代測定の結果、「タール砂漠はインダス文明が誕生する遙か以前に形成されていた」、「インダス文明は砂漠の上に成立した都市文明であった」ということを明らかにすることができました。」現在でも砂漠の上に遺跡が発見されるのですから、この結論は間違っていないでしょう。
我ながら、「目から鱗」の結論でしたが、「世界四大文明はいずれも大河流域に発達した文明である」という概念はどうして定説になったのだろう。ここに教科書やインターネット情報だけでは得ることができない「研究」のおもしろさ、つまり「課題設定をして実際に調査して答えを導き出す」おもしろさがあります。
ところで、「課題を発見すること」と「課題を解決して答えを見出すこと」は、どちらが難しいでしょうか。「課題を解決して答えを見出す」ためには、自ら調べ、データを整理分析して答えを見つけることになりますが、課題が明確であれば、一定の答えを見つけることは比較的容易です。一方、「課題を発見(設定)する」ためには既成の概念にとらわれずに問題意識を明確にすることが不可欠です。そうでなければ、「インダス文明は世界四大文明のひとつであるから大河文明である」という固定観念から抜け出すことができません。自分が何を知りたいのか、自分に何が必要なのか、自分が何になろうとしているのか、が明確でなければ、一生懸命勉強して優秀な点をとっても単なる秀才であり、知識のパッケージに過ぎません。そこから新しい何かを生み出す躍動性は生まれません。乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站での学びの「課題」は先生に与えられた宿題ではなく「自分にとって解決すべき課題」だから、オモシロイのです。
「極めたい課題は何か」を自分に問いかけて設定するためには、幅広い知識が必要です。乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站で広く、深く知識を吸収し、体験的に学ぶなかで、自分を客観視し、相対化するなかで自分の「課題」が見えてきます。一見して、すぐには役立たない知識を幅広く、また深く吸収してください。体験を重ねることによって直感を研ぎ澄ます訓練も重要です。そのプロセスで、「基礎基本」が足りないと感じることがあったとすれば、それはチャンスですから、「基礎基本」にも取り組んで下さい。そういうことが積み重なって身についたものが諸君の「教養」となり、「資質」となります。
みなさんの研究で専門性を高めるのは、教職科目であり、教科専門科目でありますが、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站のカリキュラムで用意されている授業だけでは必要なすべてを教授できないことは自明のことです。授業では、「学び方を学ぶ」ことが重要です。「学び方」を習得することによって、自分の関心に応じたアプローチをすることができるようになります。学びを重ねる一連の作業によって、学びを楽しいと感じるようになるでしょう。義務的に学ぶのではなく、学びを楽しんでください。
課外活動に、フィールドワークに、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站ート活動やボランティア活動にトライして、新しい発見をしてください。授業で学ぶこととは異なる体験のなかに学びを深めるヒントがあるかもしれません。海外に出ること、いろいろな本を手当たり次第に乱読することも有効です。学生時代の知的体験、実践的体験が多ければ多いほど、裾野が拡がり、高い専門性をピラミッドのように築くことが可能になります。知的体験、実践的体験は困難にぶち当たったとき、解決の糸口を切りひらく潜在的な力になります。それは、また、人生を楽しく、豊かにします。
今までお話ししたことと重なりますが、みなさんがこれから過ごす乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站生活において重要な3つのことを強調したいと思います。
みなさんの多くは将来教壇に立つことになるでしょう。小学校から今日までに「素晴らしい先生」「輝いて見える先生」、「あんな大人になりたい」という恩師がいたと思います。どんな職業人になるにしろ、人間(ひと)としての魅力をもちたいものです。豊富な知識とともに身につけたいことは「人間としての存在の魅力」です。「存在すること自体が魅力」である教師は豊かな知識と技能、高いコミュニケーション力に加えて、豊かな心と包容力を持っています。その基礎を学生時代に築いていただきたいと思います。
みなさんの奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站での生活が、豊かで、充実したものになることを信じて、告示といたします。
平成27年4月2日 奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站長 長友 恒人